ニュージーランドで起業|ビザ取得から会社設立・資金調達まで徹底解説
- lmeysmasa
- 4月23日
- 読了時間: 15分

「いつか海外で起業したい」「大自然に囲まれたニュージーランドでビジネスを始めたい」
そう考えている起業家や個人事業主の方は多いのではないでしょうか。
ニュージーランドは、世界銀行の「ビジネスのしやすさランキング」で常に上位にランクインするほど、起業に適した環境を持つ国です。シンプルな税制やスムーズな会社設立手続き、多くのビジネスチャンスがあることから、海外進出を目指す日本人起業家にも人気の選択肢となっています。
しかし、海外での起業は、ビザの取得や会社設立、資金調達など、日本とは異なる複雑な手続きが必要です。
そこでこの記事では、ニュージーランドで起業するために必要なビザ取得の条件と申請手順、会社設立の流れ、資金調達の方法などを詳しく解説します。具体的な手続きだけでなく、成功するためのポイントも紹介しているので、これからニュージーランドでの起業を考えている方はぜひ最後までご覧ください。
目次
ニュージーランドで起業する3つのメリット
ニュージーランドは、ビジネスを始めるうえで非常に魅力的な環境を備えた国です。透明性の高いビジネス環境、シンプルな税制、海外市場へのアクセスの良さなど、起業家にとって多くの利点があります。
ここでは、ニュージーランドで起業することの代表的な3つのメリットについて詳しく解説します。ニュージーランドがなぜ起業に適した国なのかを具体的に見ていきましょう。
①ニュージーランドは起業がしやすい
ニュージーランドは、世界銀行の「ビジネスのしやすさランキング※」で常に上位に位置する国であり、会社設立の手続きが非常にスムーズです。例えば、オンラインでの法人登記は最短1日で完了するほどシンプルな仕組みになっています。
さらに、必要な手続きが明確で官公庁のサポート体制も整っているため、英語が得意でなくても進めやすい環境です。政府の公式サイト(New Zealand Companies Office)から手続きを行え、専門家に依頼しなくても起業できるケースが多くあります。
また、ビジネス文化も起業家を歓迎する風土があり、投資家やビジネスコミュニティとのネットワーク構築がしやすいのも特徴です。こうした環境が、新規事業の立ち上げを後押ししています。
②税制がシンプルで負担が少ない
ニュージーランドの税制は非常にシンプルで、法人税率は28%と比較的低い水準に設定されています。さらに、日本と異なり消費税(GST)は一律15%であり、税率が頻繁に変更されることが少なく、計算がしやすいのが特徴です。
また、ニュージーランドではキャピタルゲイン税(株式や不動産の売却益に対する税金)が基本的に課税されないため、事業の売却や投資による利益を得やすい環境が整っています。
加えて、税務申告の手続きもオンラインで完結可能であり、会計処理がシンプルなため、税理士に依頼せずに自身で申告することも十分可能です。コストを抑えながら事業運営できる点も大きなメリットといえます。
③国際的なビジネスチャンスが豊富
ニュージーランドは、自由貿易協定(FTA)を多数締結しており、貿易のハードルが低い国の一つです。特にアジア太平洋地域との経済的な結びつきが強く、日本をはじめとする多くの国とのビジネス展開がしやすい環境が整っています。
またニュージーランドの企業は、英語圏の市場に直接アクセスできるため、グローバル展開を視野に入れたビジネスモデルを構築しやすい点も魅力です。オーストラリアとの経済的な結びつきも強く、両国での事業展開を視野に入れる起業家も少なくありません。
さらに政府が起業家向けの補助金や支援プログラムを積極的に展開しており、スタートアップや新規事業の成長を後押ししています。海外市場へチャレンジしたい起業家にとって、非常に魅力的なビジネス環境といえるでしょう。
ニュージーランドで起業するには起業家ビザが必要
ニュージーランドでビジネスを立ち上げるには、適切なビザの取得が不可欠です。特に、海外からの起業家が事業を始める場合、「起業家ビザ(Entrepreneur Work Visa)」が必要になります。このビザは、ニュージーランドでのビジネスを計画し、実際に運営するための許可を得るものです。
ここでは、起業家ビザの取得条件、申請の流れと必要書類、取得後に注意すべきポイントについて詳しく解説します。ニュージーランドで起業を考えている方は、ビザ取得のプロセスをしっかりと理解し、スムーズな申請準備を進めていきましょう。
起業家ビザの取得条件
「起業家ビザ(Entrepreneur Work Visa)」は、ニュージーランドで新しいビジネスを立ち上げる、または既存の事業を買収・拡大することを目的とする外国人起業家向けのビザです。
起業家ビザの主な取得条件
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ビザ申請の流れと必要書類

ニュージーランドの起業家ビザは、オンライン申請から正式なビザ取得まで5つのステップで進みます。
オンライン申請準備
事前にビジネスプランや必要書類を用意し、ニュージーランド移民局の公式サイトから申請を開始します。
必要書類の提出
ビジネスプラン(市場調査・財務計画・事業戦略を含む)
投資資金の証明(銀行の残高証明など)
パスポートコピー、無犯罪証明書、健康診断書、英語能力証明(IELTS 4.0以上)
ビザの審査
提出された書類をもとに移民局が審査を実施。通常3〜6か月かかり、追加書類を求められることもあります。
仮の起業家ビザ発行(12か月間)
承認されると1年間の仮ビザ(Entrepreneur Work Visa)が発行され、事業開始と進捗報告が求められます。
正式な起業家ビザの取得(2年間)
仮ビザ期間中に事業が順調に進んでいると認められれば、追加で2年間の正式なビザが付与されます。
この流れに沿って、必要な準備を整え、確実にビザ取得を進めましょう。
ビザ取得後に注意すべきポイント
ビザ取得後は、事業を継続し、計画通り進めることが重要です。ニュージーランド移民局から定期的な事業進捗の報告を求められる場合があり、計画通りに進んでいないとビザの更新が難しくなる可能性があります。
また、税務申告(IRD登録)や労働法の遵守など、現地の法律を守ることが必要です。事業が成功し、経済に貢献していると認められれば、永住権(Resident Visa)への移行も可能になります。
ニュージーランドで起業するための会社設立
ニュージーランドで起業を成功させるには、適切な会社形態の選択と設立手続きの理解が不可欠です。事業の種類や規模に応じた法人形態を選び、必要な登録や手続きを把握することで、スムーズに事業を立ち上げることができます。
ここでは会社の種類、最適な事業形態の選び方、設立手続きの流れを詳しく解説します。起業の第一歩を確実に踏み出し、成功への道を築きましょう。
ニュージーランドの会社の種類
ニュージーランドで会社を設立する際は、事業規模や運営形態に適した法人形態を選ぶことが重要です。以下に、主な会社形態の種類と特徴を表にまとめました。
会社形態 | 特徴 | 法人税 | 責任の範囲 | 設立の しやすさ |
個人事業主 (Sole Trader) | ・1人で事業運営 ・法人登録不要 ・設立コストが低い | なし(個人所得として課税) | 無限責任 (個人が負う) | 非常に簡単 |
パートナーシップ (Partnership) | ・2人以上で事業を共同運営 ・利益と責任を共有 | なし(個人所得として課税) | 各パートナーが負担 | 簡単 |
有限責任会社 (LTD) | ・法人として独立 ・株主の責任は出資額まで | あり(法人税が適用) | 株主の責任は限定 | 一般的 |
支店(Branch) | ・日本法人を維持しつつ現地で支店運営 ・親会社が責任を負う | 本社の税務ルールに依存 | 親会社が全責任 | 比較的簡単 |
現地法人 (Subsidiary) | ・日本企業の100%子会社として独立法人を設立 ・ニュージーランド法人として運営 | あり(法人税が適用) | 親会社と独立 | やや難しい |
適切な事業形態の選び方
事業の規模や運営方針に応じて、適切な会社形態を選ぶことが重要です。
小規模ビジネス⇒個人事業主(Sole Trader)が適しており、手続きが簡単です。
共同経営⇒パートナーシップ(Partnership)を選び、利益と責任を分担できます。
事業拡大や投資なら⇒有限責任会社(LTD)が適し、法人として独立できます。
税制面では、個人事業主やパートナーシップは個人所得税が適用され、手続きがシンプルです。一方、LTDは法人税が適用されますが、経費計上の柔軟性があります。
また、資金調達のしやすさも考慮が必要です。LTDや現地法人は投資家や銀行からの信用を得やすい一方、個人事業主では大規模な資金調達が難しいことがあります。
さらに責任範囲も重要です。個人事業主やパートナーシップでは経営者が個人で責任を負いますが、LTDは法人として独立し、個人資産が保護されます。
事業の将来を見据え、リスクや成長戦略を考慮しながら、最適な形態を選びましょう。
会社設立に必要な手続きと書類
ニュージーランドでの会社設立には、オンラインでの登録が可能です。以下のステップに沿って手続きを進めましょう。

ニュージーランドでの会社設立には、オンラインでの登録が可能です。以下のステップに沿って手続きを進めましょう。
ニュージーランドでの会社設立手順
会社登記局のウェブサイトで会社を登録し、事前に会社名の予約を行います。事業内容や株主・取締役情報も登録が必要です。
政府のオンライン認証システムRealMe®を作成し、会社登録に利用します。
納税のためにIRD(税務局)で会社の納税者番号を取得します。
会社運営のためにビジネス用銀行口座を開設し、個人資産と分けます。
年間売上60,000NZD以上の場合、GST(消費税)登録が必要です。 |
RealMe®とは?事業登録の必須ツール
RealMe®は、ニュージーランド政府が提供するオンライン認証システムで、会社設立や税務手続きなどに必要です。本人確認の手続きをオンラインで行え、税務申請やビザ申請、政府機関の各種サービスにも利用できます。アカウントの作成は無料で、事業を開始する際に必須の手続きとなります。
事業番号(IRD Number)の取得方法
IRD Numberは、ニュージーランドの税務申告に必要な納税者番号です。取得方法は以下の通りです。
IRDの公式サイトで申請フォームを記入
会社情報(名称、登記住所、代表者情報)を入力
RealMe®を利用してオンライン申請
申請完了後、通常5〜10営業日で発行される
この番号がないと税務申告や銀行口座開設ができないため、会社設立後すぐに申請しましょう。
会社登記に必要な書類と申請手順
会社の登記には以下の書類が必要です。
必要書類
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申請手順
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手続きはオンラインで完結し、通常1〜2日で完了します。
ニュージーランドでの起業にかかる費用
ニュージーランドで会社を設立する際には、設立費用や資本金の準備が不可欠です。
また、事業を軌道に乗せるためには、資金調達の手段を知り、活用可能な制度を理解することが重要です。ニュージーランドでは政府や金融機関が提供するさまざまな助成金や融資制度があり、これらを活用することでスムーズに事業を成長させることができます。
ここでは、会社設立に必要な具体的なコストや資本金、資金調達の方法や活用できる制度について詳しく解説します。事前にしっかりと準備を行い、スムーズな起業を実現しましょう。
会社設立に必要なコストと資本金
ニュージーランドで会社を設立する際には、法人形態や事業規模によって異なるさまざまな費用が発生します。以下に、主なコストを表にまとめました。
会社設立にかかる主な費用
費用項目 | 内容 | 費用目安(NZD) |
会社登録費用 | 会社名予約(Name Reservation) 法人登記費用(LTD設立) 企業番号(NZBN)取得 | 10~20 100〜150 無料 |
IRDナンバー(税務登録) | 申請・取得費用 | 無料 |
銀行口座開設費用 | 口座維持費・開設手数料 オンライン決済システム導入 | 0〜50 20〜50/月 |
事業運営費 | コワーキングスペース賃料 専用オフィス賃料 会計・税務顧問料 マーケティング・広告費 従業員の給与(最低賃金時給22.70NZD) | 200〜600/月 1,000〜/月 1,500〜3,000/年 200〜/月 47,000〜/年(フルタイム) |
資本金の目安 | 最低資本金の規定なし(一般的な準備額) | 5,000〜50,000 |
ポイント
個人事業主(Sole Trader)は法人登録が不要なため、登記費用がかかりません。
法人(LTD)を設立する場合は、会社登録費用や銀行口座開設費用が発生します。
ビジネス運営に必要なコストも考慮し、資本金を適切に確保することが重要です。
事業の規模や計画に応じて、必要な資金を準備しましょう。
資金調達の方法と活用できる制度
ニュージーランドでは、自己資金、銀行融資、投資家、クラウドファンディング、政府補助金などの方法で資金調達が可能です。
自己資金は最もシンプルで、小規模ビジネスでは初期投資を抑えて自己資金のみで始めるケースが一般的です。銀行融資(SMEローンやオーバードラフト)は、事業計画書や担保が重要視され、金利は6〜12%程度です。
投資家やベンチャーキャピタル(VC)を活用する方法もあり、NZVIF(政府支援VC)やIcehouse Venturesなどがスタートアップ向けに資金を提供しています。クラウドファンディングも有効で、PledgeMeやSnowball Effectを利用すれば、資金調達と市場調査を同時に進められます。
政府の補助金制度には、Callaghan Innovation Grants(テクノロジー支援)やRegional Business Partner Network(中小企業支援)などがあり、申請には明確な事業計画が必要です。事業の成長に合わせて、最適な資金調達方法を選びましょう。
ニュージーランドでの銀行口座開設と資金管理
ニュージーランドで起業する際、ビジネス用銀行口座の開設と資金管理は必須のステップです。事業の収支を明確にし、税務処理をスムーズに行うためにも、個人の銀行口座とは分けて管理することが推奨されます。
ニュージーランドの銀行は、オンラインバンキングの利便性が高く、海外送金にも対応しやすいのが特徴です。また、Wise(旧TransferWise)などのマルチカレンシー口座を活用することで、海外取引のコストを抑えることも可能です。
ここでは、ビジネス用銀行口座の選び方と開設手順、海外送金・資金移動の注意点について詳しく解説します。適切な口座を選び、効率的な資金管理を行うことで、スムーズな事業運営を実現しましょう。
ビジネス用銀行口座の選び方と開設手順
ビジネス用の銀行口座を開設することで、会計処理がスムーズになり、税務申告の負担を軽減できます。ニュージーランドの主要銀行(ANZ、BNZ、ASB、Westpac、Kiwibank)では異なるプランを提供しており、月額維持費、海外送金手数料、オンラインバンキングの利便性を考慮して選ぶことが大切です。
海外取引が多い場合は、Wiseのマルチカレンシー口座を活用すると、為替手数料を抑えてスムーズな国際送金が可能です。
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口座開設には、法人登記証明書(Certificate of Incorporation)、IRDナンバー(税務登録番号)、事業概要などの提出が必要です。申請は店舗で行うのが一般的ですが、一部の銀行ではオンライン申請も可能です。審査には数日〜数週間かかるため、早めの手続きをおすすめします。
海外送金・資金移動の注意点
海外送金では送金手数料や為替レートの影響を考慮する必要があります。ニュージーランドの銀行では、10,000NZD以上の送金に追加書類の提出が求められることがあるため、事前に銀行のルールを確認しましょう。
銀行の国際送金サービスは手数料が高いため、WiseやRevolutなどのフィンテックサービスを活用すると、低コストで送金できます。税務面では、GST(消費税)や海外収益に関する申告義務があるため、会計士と相談するのが安心です。
また、詐欺や不正送金のリスクを避けるため、送金前に銀行や送金サービスの正規サイトを確認し、二段階認証を設定しましょう。大きな金額を送る場合は、少額のテスト送金を行うと安全です。
まとめ
ニュージーランドでの起業は、シンプルな手続きと国際的なビジネス環境が整った魅力的な選択肢です。しかし、成功にはビザ取得、会社設立、資金計画、資金調達、資金管理など、入念な準備が必要です。
大切なのは、正しい情報を得て具体的な行動を起こすことです。事業の目的を明確にし、最適なビザや法人形態を選び現実的な資金計画を立てましょう。さらに、現地の法規制や税制を理解し、安定した経営基盤を築くことが重要です。
海外での起業には不安もありますが、適切な準備と専門家のサポートがあればスムーズにスタートできます。まずは事業計画を具体化し、必要な手続きを一つずつ進めることが第一歩です。
La Quartaでは、海外でビジネスを立ち上げたい方を、会社設立の専門チームがサポートいたします。ぜひお気軽にお問合せ下さい。
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