
老後の暮らしを海外で考えるならニュージーランドは理想的な移住先の一つです。温暖な気候、豊かな自然、充実した医療制度が整い、安心して暮らせる環境が魅力です。しかし、生活費はどれくらいかかるのか、日本の年金は受け取れるのかといった不安を感じる方も多いでしょう。
この記事では、ニュージーランドの基本情報や魅力、移住後の生活費や年金制度まで詳しく解説します。日本と比較した際のポイントや、移住をスムーズに進めるための準備についても紹介します。
移住に最適?ニュージーランドはどんな国?
ニュージーランドと聞いて、すぐに地図で場所を指せる方は少ないかもしれません。ニュージーランドは、オーストラリアの東に位置し、豊かな自然と温暖な気候に恵まれた南半球の島国です。羊の数が人口を上回るほど広大な牧草地が広がり、映画のロケ地としても知られる美しい風景が魅力です。
ここでは、ニュージーランドがどのような国なのか、地理や気候、言語、そして日本からのアクセスについて解説します。
地理

ニュージーランドは、オーストラリアの東側に位置する南半球の国で、北島と南島の2つの主要な島と小さな島々から成り立っています。国土面積は日本より小さく、約26.8万平方キロメートルですが、人口は約500万人と少ないため広々とした環境でのびのびと生活できます。
特徴的なのは豊かな自然に囲まれた環境です。北島は温暖な気候で都市部が多く、首都ウェリントンや最大都市オークランドがあります。一方、南島は手つかずの自然が多く残り、山々や湖が広がる美しい景観が魅力です。
日本からのアクセスや時差
ニュージーランドへの移動は日本から直行便があるため比較的スムーズです。成田空港や関西国際空港からオークランド国際空港までの直行便が運航しており、飛行時間は約11時間~12時間です。また、オーストラリア経由やシンガポール経由でのアクセスも可能です。
時差について
時差は、日本よりも3~4時間早く(ニュージーランドの方が進んでいる)、サマータイムが適用される期間(9月下旬〜4月上旬)にはさらに1時間早まります。時差が比較的少ないため日本の家族や友人とも連絡が取りやすい点が移住者にとってのメリットです。
気候
ニュージーランドの気候は、日本と同様に四季がありますが、国全体が温帯または海洋性気候に属しており、極端な寒暖差が少なく過ごしやすい環境です。
北島(オークランド、ウェリントンなど)
年間を通じて温暖で、冬でも平均気温は10℃前後。夏は30℃を超えることは少なく、湿度が低いため快適に過ごせます。
南島(クライストチャーチ、クイーンズタウンなど)
冬は冷え込むことがあり雪が降る地域もあります。スキーリゾートとしても人気がありますが、都市部では日本の冬ほど厳しくはありません。
年間を通じて雨が多い地域もありますが、日本の梅雨のように長期間続くことは少なく、比較的晴れの日が多いのが特徴です。気温の変動が穏やかであるため、寒暖差の激しい日本と比べると快適な気候といえます。
言語
ニュージーランドの公用語は英語とマオリ語ですが、日常生活では主に英語が使用されています。英語圏の中でも比較的聞き取りやすい発音とされています。ただし、ニュージーランド特有の訛り(アクセント)があるため、最初は聞き取りに戸惑うことがあるかもしれません。
移住者向けの英語クラスがニュージーランド各地にあり、英語に自信がない方でも移住後に学ぶ機会が豊富にあります。また、オークランドのような日本人移住者が多い都市では、日本語でのサポートを受けられる機会もあります。また、日本人コミュニティが各地に存在するため、移住者同士で情報交換をしたりサポートを受けたりすることもできるでしょう。
老後の移住先にニュージーランドがおすすめな理由
老後を海外で過ごすことを考えたとき、住みやすさや安全性、医療環境などの条件を満たした国を選ぶことが重要です。ニュージーランドは、その豊かな自然、質の高い医療、治安の良さ、多様なアクティビティの充実度において老後の移住先として人気を集めています。
ここでは老後の移住に適した理由を詳しく解説します。それでは見ていきましょう。
自然豊かな環境
ニュージーランドには手つかずの大自然が広がっています。国土の大部分が山々や森林、湖に囲まれており、日常生活の中で自然を満喫できる環境が整っています。都市部でも公園や緑地が多く、都会にいながらも自然の中でリラックスした時間を過ごせます。
また、国内には数多くのウォーキングトラック(ハイキングコース)があり、気軽にアウトドアを楽しめるのも魅力です。ハイキングだけでなく、釣りやゴルフ、ガーデニングなど、多くのアクティビティが日常的に楽しめるため、アクティブな老後を送りたい人にとって理想的な環境といえます。
質の高い生活と医療
ニュージーランドは世界的に見ても生活水準が高い国の一つです。医療制度が整っており、国民健康保険制度のもとで必要な医療サービスを受けることができます。永住権を取得すれば公的医療制度の対象となり、多くの医療サービスを無料または低コストで利用できるようになります。また、プライベートの医療保険に加入すれば、待ち時間を大幅にカットすることができます。
さらに、食品の安全基準が厳しく、安全で新鮮な食材が手に入りやすいため健康的な食生活を送りやすいのも特徴です。オーガニック食品や地元で生産された野菜、乳製品など安心して食事を楽しむことができるのも魅力です。
安全で住みやすい社会
ニュージーランドは犯罪率が比較的低く、治安の良い国です。銃規制が厳しく、街中でのトラブルが少ないため高齢者にとっても落ち着いた環境で生活を送ることができます。
また、多文化共生が進んでおり、移民に対して寛容な国民性を持つため、日本人移住者にとっても住みやすい環境が整っています。
多様なアクティビティ
ニュージーランドでは、シニア世代向けのアクティビティが充実しています。ウォーキングやサイクリング、フィッシングなどのアウトドアアクティビティが豊富で、健康的なライフスタイルを維持しやすい環境が整っています。また、地域ごとに文化イベントやクラフト教室、ボランティア活動などが行われており、新しい趣味を見つけることも可能です。
特にニュージーランドはゴルフの人気が高く、美しい景観のゴルフコースが数多くあります。ゴルフ愛好者にとっては、自然の中でのびのびとプレーできる魅力的な環境です。さらに、温泉地も点在しており、リラックスできる施設が整っているため、心身ともに充実した時間を過ごすことができます。
ニュージーランドへ移住後の生活コスト
老後の移住を考える際、最も気になるポイントの一つが生活コストです。近年、ニュージーランドは老後の移住先として人気を集めていますが、実際に移住するとなると生活費がどのくらいかかるのか不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
ここでは、ニュージーランドへ移住後の生活コストについて詳しく解説していきます。食費、住居費、医療費など生活に必要な費用について具体的にご紹介しますので、参考にしてください。
食費
ニュージーランドの食費は日本と比べるとやや高めです。特に外食は割高になるため自炊を中心にすることで生活費を抑えることができます。
夫婦2人の1ヶ月あたりの食費の目安は、自炊中心の生活で約400〜600NZD(約34,400〜51,600円、1NZD=86円時)です。
主要なスーパーマーケットには「Countdown」「New World」「Pak’nSave」などがあり、ディスカウント系のPak’nSaveを利用すると比較的安価に食材を購入できます。また、地元のファーマーズマーケットでは、新鮮な野菜や果物を安く手に入れることができます。以下にニュージーランドのスーパーでの食品の一般的な価格をまとめました。
商品名 | ニュージーランドの価格(1NZD=86円換算) | 日本の価格(円) |
食パン(1斤) | 約215〜344円 | 約180〜300円 |
牛乳(1L) | 約258〜387円 | 約200〜250円 |
卵(12個) | 約516〜774円 | 約250〜400円 |
トマト(1kg) | 約430〜688円 | 約400〜600円 |
住居費
ニュージーランドの住居費は地域によって大きく異なります。特にオークランドやウェリントンといった大都市では家賃が高騰しており、東京並みのコストがかかる場合もあります。
賃貸住宅の家賃相場
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加えて、光熱費は月200〜300NZD(約17,000〜26,000円)程度かかります。
永住権のない外国人は住宅購入に制限あり
ニュージーランドでは2018年に外国人の住宅購入規制が強化され、永住権を持たない外国人は原則として既存の住宅を購入することができなくなりました。ただし、新築物件の購入や特別な許可を得ることで一定の条件下で取得できる場合もあります。移住を考えている場合は賃貸を選択肢に入れるか、事前に法律を確認することが大切です。
医療費
ニュージーランドの医療制度は充実しており、永住権を取得すれば基本的な医療サービスは公的医療制度(New Zealand Public Health System)により無料または低価格で受けることができます。ただし、永住権のない外国人や短期滞在者は医療費が全額自己負担になるため、民間の医療保険に加入することをおすすめします。
医療費の目安
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民間の医療保険は、多くの移住者が利用しており、月額100〜300NZD(約1万〜2.5万円)程度のプランが一般的です。高額な治療費を避けるために事前の保険加入を検討しましょう。
その他生活費
その他の生活費として、交通費、通信費、娯楽費などが挙げられます。
交通費
都市部ではバスや電車が利用できますが、日本ほど公共交通機関が発達していないため、多くの移住者は車を所有しています。ガソリン代は1リットル2.5〜3NZD(約210〜260円)程度です。
通信費
インターネットの月額料金は60〜100NZD(約5,000〜8,600円)、携帯電話プランは40〜80NZD(約3,500〜7,000円)程度です。
娯楽費
映画館のチケットは15〜20NZD(約1,300〜1,800円)、ジムの月会費は50〜100NZD(約4,300〜8,500円)程度です。
日本と比較したニュージーランドの年金制度
老後の移住を考える際、生活費と並んで重要なのが年金制度です。ニュージーランドでは、「NZ Super」と呼ばれる日本とは異なる年金システムが採用されています。
ここでは、NZ Superの仕組みや受給資格、日本の年金をニュージーランドで受給する方法、両国の年金を併用する際のポイントについて詳しく解説します。ぜひ移住前に知識を身につけ、事前の準備をしっかり行えるよう参考にしてください。
NZ Super(ニュージーランド年金)とは?
ニュージーランドの年金制度「NZ Super(New Zealand Superannuation)」は、国が運営する公的年金制度で一定の年齢と居住条件を満たすことで受給できます。NZ Superの特徴は日本の厚生年金や国民年金とは異なり、拠出型ではなく税金で賄われる非積立型の年金であることです。そのため、ニュージーランドで働いているかどうかに関係なく、一定の条件を満たせば誰でも受給できます。
NZ Superの受給年齢は 65歳以上 で他国と比べても比較的早い段階で受給が可能です。また、居住要件を満たせば、海外からの移住者でも受給資格を得ることができます。そのため、ニュージーランドに移住した日本人も、この年金制度を利用することが可能です。
NZ Superの受給資格と受給額
NZ Superを受給するためには、以下の居住条件を満たしている必要があります。
NZ Superの受給条件
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この条件を満たせば、ニュージーランドに移住した日本人もNZ Superを受給できます。
受給額は生活状況によって異なります。例えば、単身者の場合は1,200〜1,400NZD、夫婦で受給する場合は2人合わせて1,800〜2,100NZDが目安です。その他の大人と同居している場合は1,100〜1,300NZDとなります。なお、受給額は年次調整があり、生活費の変動に応じて増減します。また、収入がある場合でも、一定の範囲内でNZ Superを受給できます。
日本の年金をニュージーランドで受給する方法
日本で年金を納めていた場合、海外に移住しても日本の年金を受給することが可能です。ただし、年金受給の手続きや税金の取り扱いについて理解しておく必要があります。
日本の年金を海外で受給する手順
「年金請求書(海外居住者用)」を提出し、振込先を指定。
日本の年金は海外送金で受け取ることが可能。 一部の銀行では海外送金手数料が発生するため注意。
日本の年金は日本国内で所得税が課されるが、ニュージーランドとの租税条約により、二重課税を避けることが可能。 |
日本の年金との併用は可能?
NZ Superと日本の年金を併用することは可能ですが、NZ Superは他国の年金受給額によって減額される仕組みがあります。これは、ニュージーランド政府が「他国の年金を受給している場合、その分NZ Superの給付額を調整する」というポリシーを採用しているためです。
減額されるかどうかを確認するためには事前にニュージーランドのWork and Income(福祉機関)に相談することをおすすめします。さらに、日本の年金をニュージーランドの銀行で受け取る場合は、為替レートの変動による影響を受けるため定期的なレートのチェックが必要になります。
まとめ
老後にニュージーランドへの移住を考える際、生活コストや年金制度をしっかり理解しておくことが大切です。この記事では、ニュージーランドの生活費の目安や移住後の年金について詳しく解説しました。
老後の移住には様々な準備や手続きが必要ですが、ニュージーランドは自然豊かで安全な環境が整っており、理想的な移住生活を送ることができるでしょう。実際に移住を検討する際には、年金の受給資格や生活コストを具体的に把握し計画的に準備を進めることが重要です。
ニュージーランドでの移住生活に関するさらなる情報や移住計画について相談したい方は、株式会社La Quartaまでお気軽にお問い合わせください。専門家があなたの移住プランをサポートし、安心して老後を迎えるためのアドバイスを提供いたします。新しい人生のスタートを、自信を持って踏み出しましょう。
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